読者とメディアの“エンゲージメント”をどのように評価すべきか。
言い換えれば、どのメディアが読者の行動に対して大きな影響力を有すると評価すべきか。
オンライン・メディアが最初の成熟期を迎えつつあるここ数年、米国を中心に広告業界はこの指標づくりで揺れている。
印刷部数の公査や、あるいは読者リサーチによる結果以外にエンゲージメントに結びつく指標を持ちにくいプリント・メディアは苦戦を強いられてきている実情がある。
ただ、同時に読者との結びつき、紐帯という視点では、オンライン・メディアよりプリント・メディアが強いといった定性的な見解も横行している。
ITmedia Newsの「MS、オンライン広告効果測定の新手法『Engagement Mapping』」は、この指標化に一定の見解を示したものだ。
アドバタイザー&パブリッシャーソリューション(APS)事業部担当副社長ブライアン・マックアンドリューズ氏は「購入に結びついた最後の1ク リックだけを測定する手法は時代遅れだし不十分だ。Engagement Mappingでは、特定の広告主によるすべての広告(複数のサイトに表示したディスプレイ広告やビデオ内広告など)が、購入決定にどう影響したかが分か る」と語った。
MS、オンライン広告効果測定の新手法「Engagement Mapping」 - ITmedia News via kwout
先には、プリント・メディア対オンライン・メディアの図式でコメントしたが、実はことはそうとも限らない。たとえば、私たちが運営するようなオンライン・メディアで、ある商品の発表記事や当該商品の掘り下げたレビュー記事を掲載したとしよう。
ところが、読者が当該商品を購買する直接的な行動は、ある特定のECサイトや価格比較サイトで現れる可能性が高い。さらに言えば、オンライン・メディアの記事に触発されて、直接有楽町駅前の「ビックカメラ有楽町店」に出向いているかもしれないのだ。
このように例示すれば、「最後の1クリック」のみをマーケティング活動上重要視することは誤っている可能性が高いことが理解できる。
問題は、“指標化”と言うからには、プリント・メディア対オンライン・メディア、また、各種Webサイトの複数ドメインをまたぐケースなど、多様な消費者の行動軌跡の追尾を技術的に担保できなければならない。
残念ながらオンラインとオフラインにわたる消費者行動を客観化する手法は未整備だ。これは適正なサンプルに対する聞き取り調査などを積み重ねる必要があるだろう。一方、複数ドメインをまたぐ行動については、昨今話題の“行動ターゲティング”や“リターゲティング”などにより、一定の解が示されつつある。
そして最後の問題だ。複数のメディアを含んだ行動追尾ができるとしたとして、そのどれが心理的に消費者の購買行動に最も大きな影響を与えたのか。客観的な指標づくりにはまだまだ課題が残されているようだ。