ITmedia エンタープライズの記事から。
大画面版のKindleが発表された。iPhoneなどスマートフォンとの差異化が際だつ。三世代目を迎え市場が動き始めた感がある。
もっとも、生来のガジェット好き本能がびびっと反応しただけかもしれない。これが本当に新聞&書籍市場の救世主になれるかどうか。私のような人間であってもいまだ半信半疑だ。
でも、最近の私の確信からすると、あらゆるメディアは“マイメディア化”していく(ことで、生き延びる)。
なので、書籍の生き残りというよりも、新聞の生き残りには、一定の光明ではないかと見る。
書籍は、もともとマイメディアである(家族で読む書籍という市場はごく狭い)。
「書籍は持ち歩きにくいのでいやだ」とのオピニオンはめったに聞かない。
なので、Kindleが書籍市場の光明となるかと言えば、劇的な経済的インセンティブが働かなければ、無理だと思う。
ちなみに、私を想定すると、Amazonで書籍を買う。雑誌も買う。それに加えて、新聞も買えるとなると、便宜が高まる。
また、雑誌も書籍も、そしてインターネットデバイスも持ち歩くので、これらを束ね直して軽量化できる便宜もある。
それはさておき。
書籍に比べ、新聞は“家族メディア”としての紐帯がいまだに強く、家から持ち出すことにサイコロジカルバリアが働いている。
また、いかにフロー情報的読み飛ばし方をしていても、価格あるものを外出先で読み捨てにすることにいまだためらいもある(電車の網棚放置は、やはり家に持ち帰りにくい面を持つスポーツ新聞が中心だろう)。
やはり、新聞事業に対して、Kindleモデルは本質的な影響をもたらしそうな気がする。
今後、気になった記事を、自分専用にクリッピング(保持)機能などが進化洗練されてくると、旧新聞メディアの弱みはほぼ解消、かつ、プラスアルファの付加価値が提供される。(あ、でもカラー表示がまだ追いつかないが)
あとは、提供者と需用者の、それぞれのコスト意識のバランスで市場は形成されるのではないか。
わが国の新聞事業者が、Kindleモデルで“窮地”を脱するためには、都市の一人所帯読者をターゲットにし、新聞購読料プラスアルファの価格帯で(たとえば、「3年間購読申込」をすれば)、端末がレンタルされるといった商品設計がいい。
そもそも、都市の一人世帯に人的な営業をかけ、洗剤その他のインセンティブを提供する……といった手法は崩壊しているのだから、オンライン申込になるだろう。そうなると、地場の新聞販売店ビジネスをさらに追い込んでしまうわけだが。
実は、この既存販売網というエコシステムの劣化と、それへの終止符が、新聞事業回復の最大の課題なのかもしれない。