ソフトバンクの決算説明会で、社長の孫正義氏が注意を引く発言をした。
出典は「インターネットの中心は“モバイル”と“アジア”に」。ITmediaプロモバより。
同説明会では、種々の興味深い発言がなされたが、私の視点はiPhoneに関わる以下のような点に収束する。
iPhoneを使うようになってから、インターネットの利用頻度が3倍から5倍くらいに高まった。一方で、PCを使ってインターネットにアクセスする頻度は10分の1くらいになった。iPhoneを使っていると、光ファイバーって、どれくらい必要なのかと思うことがある。光を一生懸命使わないと いけない人は、インターネットの利用シーンで遅れている人なのではないかと思う。最先端を行っている人は、iPhoneのようなケータイでインターネット を使っている。iPhoneを使う前は、家に帰って1時間や2時間PCの前に座っていろいろなことをしていたが、iPhoneを使うようになってからは、 寝る前の5分未満しかPCを使わなくなった。PCを使ってインターネットを見ないといけないことほど遅れたインターネットの使い方はないと思えるほど、利用シーンは変わってきている。
モバイルキャリア企業であり、DSLベンダー、そしてさらにはiPhone発売元ともなれば、このiPhone礼賛発言は、多少なりともディスカウントして受けとめなければならない。
ただし、それでもこの発言が単に“売らんかな”の誇張と言い切れないところが、孫氏の切れ味だ。
インターネットの中心は“モバイル”と”アジア”に──ソフトバンク 2009年3月期決算 (2/2) - ITmedia プロフェッショナル モバイル via kwout
すでに私自身、別のブログポストで触れたように(「iPhoneが切り拓いた? アクティブWebデバイス市場」)、iPhoneによるWeb体験はPCによるそれを大きく凌ぐ部分があると感じる。
ネットワーク接続速度において、PCとiPhoneが同等だとすると、後は画面描画とスクリーン当たりの情報量の差異が、両者のWeb体験の優劣を基本的に決めるはずである。
「はず」ではあるのだが、決定的な優劣を感じないケースが多い。特に情報受信系(Web閲覧)ではそうだ。
iPhoneの最大の発明は、「マルチタッチ」技術だろう。
フリック、タップ、ピンチなど、指先を用いた各種ジェスチャーによるWeb閲覧は、従来のWeb体験を数段自然で、愉しいものへと進化した。
もちろん、文字入力をはじめとして、PCによるWeb体験に劣後する面も多い。
だが、PCでは得られないモビリティ、上述の至極自然なWeb体験、加えて多くのiPhoneのU/Iに最適化されたアプリケーションの付加価値で、“PCのサブセット”という位置づけは、第1世代発売時点ですでにして克服してしまった。
というわけで、孫氏が「(iPhoneの出現で)インターネット利用頻度が3倍から5倍くらいに高まり」、また、「PCを使ってインターネットにアクセスする頻度は10分の1ぐらいに(低下した)」とするのは、多少の誇張を感じないでもないが、“感覚値”としてはよく分かる気がする。
前掲の私のブログポストでは「アクティブWebデバイス」と呼んでみたが、Web閲覧重視のデバイスとして、IPhoneを筆頭とするスマートフォンは、当面市場をさらに切り拓くことだろう。