あきみち氏のブログ「Geekなぺーじ」に、オンラインコンテンツ有料化に関する有益な考察が掲載されている。
論の射程は広範に及ぶが、特に刺激を得た箇所を引用する。
専門的な内容は採算が取りにくい?
一方で、読者が少なくなるような専門的なジャンルでは収入を得にくいとも感じています。 まず、専門的になると読者数が減ります。 「ターゲットにマッチした広告は非常に良い」という話は検索エンジン広告が証明してくれていますが、コンテンツ作成側の視点から見ると全体的な読者数が少ない状態でWeb広告で収入を得るのは至難の技です。 表示回数が少ないと不利ですし、Adsense(Adwords)的な仕組みだと広告を出す人が少ないのでクリック単価が低いこともあります。 専門的なコンテンツがロングテール的にある事は良い事です、ただし、その利益を最も得るのはロングテールそのものを「まとめ上げる」ことが出来る存在であり、ロングテールの個々の要素を構成するニッチサイトではありません。
専門的なジャンル用に記事を書こうと思うと、調査や執筆に時間がかかる傾向がありそうです。 真面目に調べようと思えば思うほど、時間がかかり、さらに特定分野を深く書ける人は少なくなる傾向があります。 IT系の分野であれば非常に多くのニッチ情報があるようにも見えますが、非IT分野におけるWebでの情報公開度合いを見ると愕然とすることがいまだにあります。
このくだりで、関心を引く視点がいくつかある。
- 読者が少ないと、「Web広告で収入を得るのは至難の技」であること
- (その理由は)専門コンテンツに広告を出す人は少ないこと
- 専門コンテンツで利益を得る者は、専門コンテンツ(のパブリッシャー)ではないこと=これらを「まとめ上げる」者であること
- 専門コンテンツが求められる分野はIT以外にもあるはずだが、非IT分野ではそれが豊富に存在していないこと
この場合の「総量」は、専門コンテンツの量、読者の量、広告出稿者の量……といったところだ。
結果的にあきみち氏が取り出している中間解は、他のポストでも数回取り上げた佐々木俊尚氏の表現に合せれば、「プラットフォーマー」が多量なトラフィックやその他のパワーを駆使して、ロングテール化した専門コンテンツを束ねて収益化する、というものである。
商売柄、私の関心事は、コンテンツ作成者(著者)に対する外部、言い換えれば、第三者であるプラットフォーマーにしか、収益化可能性が残されていないのかどうかということである。ここで「コンテンツ作成者の外部」もしくは「第三者」とは、取りも直さず、非コンテンツ作成者を指す。
現時点でそれらしき候補は、検索エンジン、そして、コンテンツアグリゲータ(旧称ポータル)である。
あきみち氏の指摘によれば、専門コンテンツの作成には手間ひまがかかり、それから得られる現在の収益との関係はネガティブということ。要するに労多くして益少なし、というわけだ。
他方、上記検索エンジンやコンテンツアグリゲータは、この“労”(人間の手間)の部分を極力減らすことに、事業体として長けており、労少なく得た規模と、作成コストを下回る対価(それがゼロであるケースも多い)で仕入れたコンテンツにより、全体の収益をたたき出していると理解すべきことになる。
いまのところ、このような“コンテンツ作成者に収益が見合わない”状況を打破できるような、楽観的な視点は存在しない。
なまなましい事業運営的観点を排除して、抽象的に語るなら、私の想定しているブレークスルーは、以下のようなポイントを含んだものとなる。
- コンテンツが収益を稼ぐ機会を増やす(=単価は少額でも、オンライン広告を何度でも表示掲載できる機会を生成する)
- コンテンツに対する、情報ニーズおよびマーケティングニーズに対して、自らのみでなく、協業的に回答を創り出す(=コンテンツ・シンジケーションを形成、かつ、対価の適切な分配)
- (上記1.と矛盾的に響くかもしれないが)広告表示総数を最大の価値軸とすることから、他の価値軸へと本質的な移動をめざす
私たちが克服(ブレークスルー)しなければならない課題とは、広告モデルか/コンテンツ有償モデルか、という収益獲得手法の以前に、あたかも過剰性に満ちてしまったかに見えるオンライン・メディア市場において、希少性を改めてどのように措定するかということなのだと考えさせられる。
回答の中心にあるのは、「専門コンテンツ」であるのはもちろんのことだ。
「Geekなぺーじ」が示唆しているのは、そのようなことと受けとめる。