メディア・パブ「メディア職とマーケティング職,就業状況で明暗がくっきり」は、興味深い事実を伝えている。
米国での現象だが、メディア在職者がどんどん減る傾向を見せ、片や、マーケティング職が増加の傾向という。
直感的には“自然”なことだが、しかし、データで事実として見せつけられると、その事実の重さに身が引き締まる思いだ。
なぜメディア業界の労働需要が減っていくのだろうか。以前なら,同じようなコンテンツを提供していても多くのメディア企業(新聞社,雑誌社,TV局)が 共存し繁栄できた。だが,グローバルなインターネットの出現で,同じようなコンテンツを作るメディア企業が数多く存在する必要がなくなっているのかもしれ ない。それに,ユーザー生成コンテンツ(UGC:User Generated Content)の台頭が,プロの編集者の仕事を減らしていくとも言われ 始めている。欧州の新聞経営者3000人を対象に実施したアンケート調査によると,3年以内に新聞記事の約40%がUGC(User Generated Content)で占められるそうな。どうもこれは,新聞経営者が人員削減をしたいというシグナルのようだ。
メディア・パブ: メディア職とマーケティング職,就業状況で明暗がくっきり via kwout
引用した記事内ですでに分析がされているが、私なりにもう一度、解釈を示す。
- 既存メディア産業(特に新聞)において雇用余力(言い換えれば収益性)が失われつつあることが、最大の理由
- 内部的にはオンライン・メディアへのシフトが生じているが、その弾力性が低いのが「新聞」「TV放送局」である
- オンライン・メディアへの移行は、メディアがより一層“マーケティング・ツール”としての機能を強めることである。マーケターはこのツールを使いこなすオペレータである
- 起きている現象が不幸な現象か、幸福な現象かを決めるのは、メディア人がこの“ツール”の騎手となり得るか否かによる(もし、メディア人ではなく、外部からマーケティング職に流入しているのなら不幸な現象としか言い得ない)
この部分について、もう少し詳細に現代的な事象を検討してみたいが、それは池田信夫の近著『過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか?』などを題材に別の機会に検討してみたい。
私が考えるのは、この現代メディア産業が持つ機能としての二側面は、インターネット(つまり、オンライン・メディア)化が進展する中で、劇的な構造変化を遂げようとしている。この“劇的”という語に注目したい。
従前においては、「マーケティング・ツールとしてのメディア」のコントロールは、完全に供給者の側にあった。供給者とは、マーケティングする者とメディアを運営する者を意味する。この二者間にコントロールがあった。
「劇的な構造変化」は、従前のこの図式に破壊的なインパクトをもたらしているのだ。メディア運営者はコントロールを失いつつある。
引用したメディア・パブの記事が示すのは、この劇的な構造変化の表象として見るべきだ。