この週末、東京は小金井市に位置する「江戸東京たてもの園」を訪れた。
江戸期から明治・大正・昭和にいたるさまざまな住宅や商店、そして銭湯などの建築物を移築、保存した野外博物館だ。
特に東ゾーンに集められた東京は下町の商店や住宅、銭湯などの構築物は、「情景再現」というさながらテーマパークの趣で、ともかく楽しい。
さて、今回同園を訪れる最大の眼目、お目当ては旧前川國男邸。
ご存知、昭和のはじめ、ル・コルビュジエに師事し、上野に位置する東京文化会館や、国立国会図書館その他、著名な大型構造建築を遺した建築家前川國男の自宅だ。
それら大型のビル建築なども関心があるが、なによりも私は彼の自宅に興味がある。写真集やTV番組などで観てきたのだが、小金井にその旧前川邸が移築、保全されているとのことで、その良さを実体験すべく訪れた次第。
前回の地元の、木造民家の撮影小旅行に次ぐ、「あこがれのお宅拝見、パートII」というわけだ。
実際に訪れ、まさに上がり込み、家の中を歩き回って実感したことは、「やっぱり素晴しい!」の一言。
決して広大、豪壮という種類のものではなく、夫婦二人、もしくは戦時下で都心に設計事務所を維持できずに仕事場としても利用した同邸は、プライベート空間というよりは、心地よい共有空間に秀でていた。
吹き抜けのリビングは、屋外との一体感が強く、非常に快適。
隣室に設けられた仕事部屋も、これまた、屋外の光景や陽光をうまく取り入れながらも、落ち着きがあり、これまた快適。こんな空間で自分の関心ある仕事に没頭できたら幸せだ。
同園では、前川邸周辺に、やはり大正から昭和にかけての名住宅建築が移築されており、愉しい。
一緒に、大正14年築という「田園調布の家(旧大川栄邸)」も訪れてみた。
こちらは、前川邸ほどの意匠を備えたものではないが、私の実母が生まれたぐらいの時期に、これほどにモダンで明るい洋風建築が建てられていたことに、感慨を憶えた。
両住宅とも、小金井の豊かな緑、特に立派なケヤキの木のそばにあり、今も生き生きと存在感を放っていることに驚いた。
朝から活発に活動する多くのボランティアの人々に出会ったが、それも理由のひとつなのだろう。
また、ぜひ訪れてみたい理想の“住宅地”だ。