この連休、前後に休暇をもらい、九州に向かった。
例年この時期に実施しているが、今年も判で押したような、昨年同様の旅程となった。
九州は湯布院。春がいいのか晩秋がいいか。悩むところだが、今年も晩秋を選択。
下の写真は、いかにも、の湯布院。
いまや大観光地、金鱗湖、早朝の朝霧シーン。そして、今回1泊宿泊した「亀の井別荘」のフロント前(笑)。
当地には、国内では最高!(と、個人的に思い込む)の宿が、三つも集積する。亀の井別荘はそのひとつだ。
宿の主人に言わせると、「今年は、公孫樹が素晴しくきれいで」とのこと。
確かに、そこここで公孫樹の葉が浮き立つような光景に出会えた。
逆に紅葉は、やや物足りない。
旅先ではよく歩く。むろん、おいしい食事と酒の日々になるので、罪滅ぼしの気分もある。
今回は、隣り駅「南由布」に向かった。例年、気になりながら訪れる機会のなかった「旧日野医院」へ。
和洋折衷の明治建築がお目当てだ。
左端の写真が、旧日野医院本館正面。近年修復工事を経てはいるが、基本的には明治27年築のまま。大きな災害にも遭わずに無事遺されてきた。「三代目」当主が建築ということだから、相当な歴史を誇る。
写真にはないが、玄関を入った“患者待合室”にはシーボルトの肖像画が飾られている。
つまり、長崎文化圏、中でも西洋蘭学のお弟子さん筋に当たる当主が建てたこともあり、西洋建築の色味が濃いということか。
「贅を尽くす」という表現は、地域医療に貢献する医院建築には不適切かもしれないが、これほど美しい明治建築が“山里”に遺されていることに驚かされる。
九州は長崎の文化、商業交易、さらに温泉立地(隣り町には「湯平」がある)などの要素が重なり、いまとは異なる賑わいがこの地にあったことを想像させる。
ハイシーズンの週末ではあるが、国指定重要文化財を訪れる観光客は少ない。私たち以外に人気はない。
建物を守るのは、元教頭さんだとか。たった300円の入館料でたっぷり1時間建物を周遊、解説してくれた。
その脱帽するしかない情熱と人情に、また別の感慨を得た。
帰り道。見渡すかぎり山々と、その合間に広がる田んぼ。民家もちらほらというぐらいの農道を歩き南由布駅に向かった。
農道が分かれて、美しい弧を描きながら小高い丘(?)をのぼっていく。
かろうじてアスファルト舗装されていることにさえ気づかなければ、時代を見失うことができる美しい小径だ。
坂の途中は公孫樹の葉で覆われている。.頂きには個人のお墓が維持されている。
離れて見れば、お椀を伏せたような地形。古墳の存在に気づかされた。
どうやらこの地は、過去へとさかのぼればのぼるほど、豊かな経済、文化、社会圏をなしていたということらしい。