メディア・パブのポストから。
Webに力を注いできた企業サイト、そして、大きな集客力を有していた新聞社(メディア)サイト、そして大手ポータルで、一様にユニークユーザーが減少している。と同時に、FacebookやTwitterに代表されるようなソーシャルWebサイトは急激にユーザーを伸ばしている。この鋭いコントラストを含んだ現象が示唆するのは、「ユーザーが、企業サイトやメディアサイトをデスティネーションサイト(目的地)と見なくなっており、それに代わってソーシャル系サイトに向かっている」のだということ。
加えて、同ポストにはこんなコメントが添えられている。
すでに企業サイトもメディアサイトも、必ずしも自社サイトでユーザーを囲い込もうとはしていない。RSSフィード、ウィジェット、YouTubeのブラ ンドチャンネル、Facebookのファンサイト、Twitterアカウントなどなど、いろんなチャンネルを介してユーザーが企業のメッセージやメディア の記事と接することができるようにしている。
またユーザーの間では、企業サイトの情報やメディアサイトの記事を与えられたままではあま り信頼しなくなってきている。それよりも友人や特定の人のフィルターを通した形で情報や記事を信頼する傾向が強まっている。このため最近では、一般企業だ けではなくて新聞や雑誌などのメディアもこぞって、ソーシャル系サイトにブランドチャンネルを置くようになっている。たとえばFacebookのFanサ イトには、米国の有力な新聞や雑誌が相次いで特設ページを開設している。そのファンになれば、友人たちがどの記事に注目しているのか、どのような意見を持っているのかがわかる。
「原因」と「結果」が入り混じった記述となっているが、意味はよく分かる。
どうやら、90年代半ばのWeb宇宙のビッグバンは、いくつかの島宇宙へと結晶しつつあるのかもしれない。
これまでとりとめもなく拡大一方であった大宇宙にあっては、その安全な航行(ナビゲーション)のために、初期はポータル、次に検索エンジンが神のごとき威力を発揮してきた。
これからは小宇宙ごとに、その“神”ともいうべき支配構造が異なってくる可能性がある。
島宇宙のひとつは、ソーシャルWeb=Facebookであることに違いはない。
ここには、メールなどコミュニケーション機能を用いる人間関係が存在することはもちろん、無数の人々へ情報発信する広義のメディア機能、そしてニュースを見ることができる狭義のメディア機能、さらには、自分自身や知人らと時間を消費するアプリケーションなど、それ自体がWeb宇宙を形成する要素が盛り込まれている。
そして、重要なことは、この島宇宙に入るために、簡単ながらも一定の認証(ログイン)を経る必要があるということである。
このログインを経る、ということは、従来のオープンのみであったWeb大宇宙とが区別されることであり、その結果、大宇宙の支配者の支配が及びにくくなるということになる。
さて、この島宇宙の内部には、上に述べたように、ユーザーが自足する仕組みが一定程度そろいつつある。当該ブログポストで述べられているように、わざわざ広大で不慣れな大宇宙の航海に乗り出さなくとも、概ね一般的なニュースを始めとする生活情報は、居ながらにして入手できるのである。
こうなると、従来は強力なポータルや検索エンジンの威力に拝跪してきた情報提供業者(狭義のメディア)は、改めてFacebookを始めとする強力なソーシャルWebに対しても拝跪することになるのだろうか?
少なくとも、狭義のメディアビジネスにとっては、プラットフォーマがだれなのかを理解することは重い。そして、同じくらい、そのプラットフォームをいかにしたたかに生きるのか、という命題もまた重いのである。
狭義なメディアビジネスにとって、重要な選択肢はこうである。
専門性高くコンテンツを生成して供給すること。そして、それをビジネスに結びつける手法をつねに開発し続けること。
本ブログポストが示唆する、島宇宙ごとの生態系の生成という新たな兆候は、この専門性あるコンテンツを自前の店舗で販売し続けるか、あるいは、さまざまな場所で販売するのか、はたまた、その販売方法をネットワーク化するか、などのバリエーションの検討、フィージビリティを加速させるのである。