前回の続きである。
「発想」「構想」、つまり、アイデアの創出と記録については、前回の(1)で述べた。
今回は、タスクの管理どうやっているかについて簡略に述べる。
■ プロジェクトとタスクとは?
まず、タスクとは何かを整理しておこう。
用語法などについては、専門書も多く出ているのでそちらに任そう。
私が考えるタスクとは……、
- 出発点から実現すべきゴール(目的)に至るまでを完結的に構成する作業を、「プロジェクト」と考える
- そのプロジェクトを構成する各種要素の各々ひとつを「タスク」と見なす
- 各種タスクは、単なるプロジェクトの物理的なパーツであるだけでなく、プロジェクトを完遂する時間上、もしくは手続き上不可分な構想要素となっていることがある
といった概念構成になる。
そもそもプロジェクトという概念を用いる際には、その構成要素(タスク)が可視化されていなければならない。
が、ある(プロジェクトではなく)タスクを割り当てられたと思って取り組んでみたが、タスクと見なしていたものがプロジェクトであり、多様なタスクによって構成されているものであったというケースも多い。そのような場合には、結果的に作業の工程や時間上の見積もりを誤るということになりかねないのである。
そこで、プロジェクトが発生した際、自らがプロジェクト遂行を担う場合、まずは自分でプロジェクトを思考上で、分解してみる。タスクへと分解整理してみるのが良い。
この「分解整理」には、前回触れたように、なるべく大きめのノートやMindManagerのようなマインドマップツールを用いるのが良いだろう。
場所などの制約で、利用できるツールが限定されるような場合には、ポストイットのような付箋紙にタスクを書き出すのもいい。
このタスクへの分解整理には、「このタスクは難しそうだ」とか「締め切りまで時間がなさすぎる」など、否定的な観点が先行すると的確な分解ができなくなる。したがって、この作業には、たとえ自分一人であったとしても複数の人間がブレストするような発想の柔軟さや自由さが担保されるようなアプローチで行うべきだ。
さて、個々のタスクの管理についてである。
■ タスク管理とはなにか
私が用いる定義におけるタスクは、2種類に大別できる。
- 遂行しなければならない課題(=プロジェクト)の構成要素としてのタスク
- さまざまな折りに、自ら思い立った単純な(完結的な)仕事、他から要請された同じく単純な仕事
と、このようなものである。
ちなみに、2.のような単純でも完結的でもない仕事が眼の前に生じた場合どうするかと言えば、1.のように、それをプロジェクトとして受けとめ、分解整理する行程を付け加えるだけだ。
ともかく、「他人から指図は受けない」というような立場にある人間であったとしても、自らに課す仕事が消えてなくなりはしない。
したがって、重要度においてはプロジェクトに劣るものの、タスクは消えてなくなるどころか積み上がる一方なのである。
そこで、効率的にこれをこなすには、何らかの経験に基づく手法が必要となる。
世に「タスク管理」「ToDo管理」の極意的なものが溢れかえるゆえんである。
■ だれでもできるリーズナブルなタスク管理手法
先に言い訳をするようだが、以下で書き留めようとしている私のノウハウは、画期的な手法でもなんでもない。
むしろ、だらしなく忘れっぽい自分でも、どうにか運営できるといった種類のものだ。
言い換えれば、これぐらいだったら世のビジネスパーソンはだれでもできそうであるという証言のようなことだ。
1. 思いついた、もしくは、突然言い渡されたタスクを的確に記録する方法を開発する
小さなメモ帳を持ち歩く、ケータイやスマートフォンなどでそれを代替するなど、自分のワーク&ライフスタイルに見合った記録法を開発し、それを徹底する必要がある。個人差があって然るべきだが、汎用的に言えるのは小さなメモ帳やポストイットを持ち歩くか、周囲に備置しておくことである。タスクは、忘れたい、隠蔽したいとする心理的傾斜に抗って顕在化したものとも言える。それを逃さず的確に書き留めることは、重要なことである。
2. 個々に書き留めたタスクを統合する
たとえば、「○×氏に相談のメールをする」と思いついたタスクを手許のメモ帳に書き留めたとする。そのまま実行に移すならともかく、時間をおいて実行する場合には、締め切り時期を決めて実行待ち行列に入れてやる(管理する)必要がある。
つまり、書き留めただけではダメ、整理して時系列に入れ直さなければ! ということ。
こうなると、後から種々メンテナンスしやすいデジタル系のタスク管理が魅力的になる。持ち歩きやら操作性などから、私はiPhone上でRememberTheMilkを用いるのが最適と考えている。
3. 電子メール経由のタスクへの対処ポリシーを設ける
わざわざ書き留めるほどでもなく……、と思うが故に忘れがち、遂行未遂になりがちなのが、電子メール経由のタスクである。そもそも返信をしなければならないということも、軽めのタスクである。現代のビジネスパーソンにとって、対処すべき外的情報の多くが電子メール隣っていることを考えると、電子メール経由のタスクへの対処ポリシーを決めておかなければならない。
繰り返しになるが、「あ、このメールに返事をしなければ...」と思っても、これをわざわざタスク管理することは少ないのではないか。“ToDo”フォルダなどを作ってみたりもするが、受信ボックスから見えなくなると途端にタスクを失念してしまう。
そこで私が採用している手法は、フラグ(マーカー)を立てること。なんの芸もない簡単さだ。その代わり、要返信以外にはフラグを用いない。受信ボックスの中でもそれだけは目立つ。また、毎日1回、フラグ付きメールを検索表示させて失念を防ぐルーチンを設けている。
4. 気分の良い時間帯に、必ずタスクの棚卸しを行う
タスク“管理”と言うからには、集積したタスクの山を“仕分け”(棚卸し)することが重要である。GTDなどでも強調されることプロセスだ。私の場合は週1回の棚卸しをルーチン化している。
どう棚卸ししているかと言うと、スケジュール(締め切り)、重要度、プロジェクトをタスクへ分解整理するなどの視点から行う。
ここで重要なのは、まだ書き出していないタスクがあるのではないかという問いだ。
そのためには気分が良い、言い換えれば、タスクを回避したいという気分が働いていない日時に行うこと。私の場合、それは土曜日の午前中である。次の週に向かって自分が最もポジティブである時期だ。「やらなければ」という気分ではなく、「やりたい」という気分があると、積極的な意識でタスクを洗い出すことができる。
もう一つ重要なのは、スケジュール(1か月程度の範囲)と見比べながら棚卸しをすること。タスクをどう遂行するか、段取りも意識しながら締め切りや重要度などを設定することができる。踏みこんで言えば、プロジェクトは、複数タスクへと分解し、さらに、締め切り日を設けるだけでなく、的確な遂行時間をスケジュール化すべきなのである。
次回は、時間配分の視点について述べてみたい。