小林啓倫氏のブログ「シロクマ日報」のポストから。
取り上げられているのは、トムソン・ロイターの社長、Chris Ahearn氏の講演で、危殆に瀕するジャーナリズムとその将来についてである。
親切にも小林氏が私訳を付してくれた箇所が、まさに膝を打つようなポイントを刺し貫いているのである。
講演の全編にわたって、なかなか考えさせられる議論が展開されているのですが、個人的に最も気になったのは以下の部分でした:
Like many we grapple with the coverage, cost and value issues of content scarcity vs. abundance as well as content uniqueness vs. utility. We choose to maximize the value of each of these four quadrants and have adaptive business models and markets which allow us to. For example, we focus principally on the importance of vertical and niche markets that have subscription-oriented models — this where our firm derives the vast majority of its revenues. We focus obsessively on the needs of professionals in those markets we serve. We don’t want to be all things to all people. We want to create journalism that has unique value to our clients, and partner with creators as warranted and needed. Most importantly, we focus on creating and providing valuable services — not just content.
競合他社と同様、我々は報道におけるコンテンツの希少性と潤沢性、独自性と有益性の費用対効果に関する 問題に取り組んでいる。我々は価値を最大化することを追求しており、また可能な限り、順応性のあるビジネスモデルと市場を追求してきた。例えば我々は、購読モデルが可能な垂直市場とニッチ市場の重要性に、主にフォーカスしてきた。これらの市場は、当社が売上のほとんどを得ている市場でもある。我々はこれらの市場における専門家のニーズにフォーカスしている。あらゆるニュースを、あらゆる人々に提供しようなどというつもりはない。我々は必要に応じてクリエー ターたちと協力しつつ、我々の顧客とパートナー企業にとって、独自の価値を持つジャーナリズムを実現したいと考えている。最も重要なことは、我々はコンテ ンツを創り出すことだけではなく、価値のあるサービスを創造して提供することにもフォーカスしているという点である。
コンテンツを創るだけでなく、「価値のあるサービス」を創ることにも注力する――言われてみれば当然のことですが、ジャーナリズムの側面からだけニュースメディアを考えていると、つい忘れてしまわれがちな視点ではないでしょうか。
「垂直市場とニッチ市場の重要性」、「専門家のニーズにフォーカス」、「あらゆるニュースを、あらゆる人々に提供しようなどというつもりはない」といった語りぐさは、まさに我が意を得たり。
さらに重要な主張と感じるのは、「コンテンツを創り出すことだけではなく」、実はそのような専門家ニーズを満たす情報提供を仕組みとして行う「価値のあるサービスを創造していく」ことと述べていることだ。私の文脈に引き寄せれば、「いい記事を書いている」ことに自足するのではなく、専門家の支援というサービス(業)にフォーカスする、ということだと受けとめる。この主張の重要さを肌身にしみて理解しているかどうか、結果はまもなく決するはずである。
ロイター・メディア社長曰く、「我々はコンテンツだけでなくサービスを創造している」:シロクマ日報:ITmedia オルタナティブ・ブログ via kwout