オフィス用具サプライのアスクル社が運営する「みんなの仕事場」。
この「みんなの仕事場」がリニューアルした。
今回の“リニューアル”について、誠 Biz.IDの記事では、以下のように説明している。
今回のリニューアルは「オフィスをつくりたい人とオフィスづくりのプロが出会う場」をコンセプトとしており、プロが答えてくれるオフィスづくり専門の Q&Aコーナーや、購入を検討しているオフィス家具の使用事例、建築事務所やデザイン会社の紹介情報といったコンテンツを追加した。
すぐ下の画面は、「みんなの仕事場」のトップページだ。Flash動画で構成されたインデックスが残念ながら表示されていないが、要するに国内のさまざまな会社(のオフィス)を、動画や静止画を使って紹介しているところが、同サイトの中心価値だ。
もちろん、それぞれがオフィス自慢な企業が登場するのだから、眺めるだけで楽しい(現在、130社ほどが掲載されている)。
推測するに、アスクルの求めるのは、オフィスに関する設計・施工ニーズの獲得、むろんオフィス家具の納入。さらには、デザイン性の高いオフィス家具や文具の事例を通じた拡販などということになる。
価格勝負のオフィスサプライからの“次の一手”が狙いだろう。
興味を引くのは、このようなデザイン性の高いオフィス施工事例Webサイトを、事例各社(施主企業)による自主投稿型(=CGM型)として企画運営していることだ。
みんなの仕事場 - 仕事場を楽しくするオフィスづくりの情報交換コミュニティ via kwout
下の画面を見て欲しい。これは「みんなの仕事場って何?」ページだ。
利用者は、私のような単なる無署名の閲覧者に加えて、「一般メンバー」と「投稿メンバー」が想定されている。
推測を補いながら整理すると以下のような構造だろうか。
- オフィス自慢の各社(施主であり、アスクルの顧客ら)が自分のオフィス写真と付帯情報を投稿する(投稿メンバー)
- 上記の投稿されたオフィス事例コンテンツをブックマークしたり、レーティングや質問したりする利用者(一般メンバー)
- 単に眺めるだけのユーザー
想像をたくましくすると、アスクルにとり望ましいのは、2.の「一般メンバー」が多く集まることだろう。
「一般メンバー」が増えれば、「投稿メンバー」がその中から析出され、コンテンツをさらに豊かにする基盤が拡充する。
逆に、「一般メンバー」が増えるには、1.「投稿メンバー」が集まり、魅力的なコンテンツを充実させることが必要だ。
ならば、「投稿メンバー」が集積するモチベーションの核は何だろう?
凝ったオフィスを実現したのだからと、「オフィス自慢」を公然と行えることか?
アスクルが「みんなの仕事場」で用意した「投稿メンバー」を引き寄せるモチベーション・ドライバーは、企業PR機能の付与である。
下記は、やはり「みんなの仕事場って何?」ページである。
画像を見てもらえればわかるので、詳しく述べないが、「投稿ユーザー」は施工したオフィスをディスプレイするだけでなく、同社オフィスを紹介するページで、社長を登場させたり、同社の商品をアピールしたり、当然、会社トップやオフィス、そして事業紹介を通じた人的採用などにも結びつけられるメリットが提供されているわけだ。
総合的に言って、申し分ないWin-Winの構図が形成されていることが理解できる。
申し分ない、のだが、これがアスクル社と掲載されている各施主企業にとって正のループへ発展していくのかどうか。
まだ予断を許さない面があるように見える。
この事業モデルに関心と感心を得た者として、批判でもそねみでもなく、下記の課題について注視したい。
- 自社オフィスのユニークさやクオリティを、自社事業PRと結びつけて行動ができるスタッフがいるのか?(広報、マーケとオフィス管理とでは担当が異なるはず)
- 自主投稿にはそれなりの労力やノウハウが必要なはず。いまは「投稿メンバー」任せではなく、アスクル側の手厚いサポートが欠かせない。いずれ本格的なCGM発展のスパイラルとなるか?
- さらに、上記1.と2.の限界を超えて、自社PR機会を駆使する企業の総数が数百社へと規模化していくか?
- そして、実際に当該ページで自社事業をPRすることに明瞭なメリットを得られるか?
特に3.と4.の正のループが実現していくには、そもそもアスクルが持つネット上での集客力が欠かせない要因となろう。
こう考えると、閾値を超える辺りに悩みが残りそうだ。さらに観察を続けてみたい。
これが上手く展開するのであれば応用範囲は広そうだ。