ベンチャーキャピタリストの辻俊彦氏が刺激的な提言を行っている。
プリント・メディア時代には、ハガキを挟み込んだりと、ショッピング(通販)への取り組みを行いながら失敗してきた経緯がある。
結果として、メディアは直接、物販などを営むケースは減少し、読者のアテンション生成(という役割)に専念することとなった。
辻氏は、オンライン・メディア時代では、改めてそれが統合、実現できるのではないかというのだ。
例示的に「通販生活」を挙げている。
引用をしておこう。オルタナティブ・ブログ「キャピタリストの視点」から、「ネットメディアはコマースで稼げるか?」というエントリより。
「「ここにどれくらいのインプレッションをこのように出稿すれば、自社のショッピングプロパティでどれくらいの確率で販売できるはずである」という仮説は、広告主でもなく広告代理店でもなくメディア自体が持つことになるのです。」
従来は、広告主がメディアに出稿し、その効果で広告主(または、その販売代理店)が販売していたので、メディアを仲介する広告代理店の役割があったのですが、メディア自身が広告効果を語れるようになれば、広告代理店の存在意義は失われます。さらに進んでいえば、メディア自身が販売代理店になったり、メディアの収益源が広告以外(販売手数料など)に広がる可能性があります。従来から、雑誌など紙メディアでは、ハガキを付けたりして通販に挑戦しましたが、物は売れずに広告収入は減る、という失敗の連続でした。通販生活が唯一の例外だと言っていいと思います。
上記で文中「」内に引用されたのは、オプトCEO海老根智仁氏「絶大なる販促効果を持つメディアにどう対抗するか」というオピニオン。
海老根氏および辻氏のオピニオンを、私なりに整理すると、こうなる。
- メディアは行動ターゲティング技術により、読者の認知・関心に沿った嗜好性を把握しつつある
- 大手ポータルによるECサイト買収の動きは、上記技術成果と実際の購買履歴情報を統合することで、上流から下流まで消費者の行動を一元的に把握しようとするもの
- 上記の一元的な把握が実現できれば、“メディア”は自律的に精度高い販促(販売)チャネルとなりうる
現在のところ、消費者の関心・興味の生成(開始点)から実際の購買(収束点)までを完備したメディアは存在しない。
そうであるが故に、一人の消費者を完全に同定できるようCookieもしくはIPを、いくつかのドメインを横断しても追尾可能なシステムが求められるのだろう。
いや、あるいは技術的にそれはほぼ完成している。あとは強大な資金力や政治力による“一元化”こそが重要な段階なのかもしれない。
さて、メディアが完結した販売チャネル足りうるには、という困難な問いを発してみなければならない。
メディアは、永く広告という商品を乗せるための“乗り物(ビークル)”という役割を担わされてきた。
だがしかし、メディアは消費者(読者)の関心・興味生成し、最適な意思決定を促す。そして、終着点まで運ぶことができる自律的な乗り物である。
不完全は販売チャネルの一部を担うのではなく。
あえて、メディアを主語に据えてみる。メディアは自律的な存在としての可能性を秘めている。それを最大化するために、再設計の時期にさしかかっている。そうすることにより、検索エンジン、価格比較データベース、読者投稿コミュニティ、それぞれの機能、役割へと押し返すことができる。