最近つとに考えるテーマは、デジタル・コミュニケーションとコラボレーションの仕組みづくりの根幹に、いかに機能的にソーシャルなアプローチを取り込んでいくかということ。
それがうまく実現できれば、“スパム地獄”から脱することができる。また、赤の他人に、重要な、あるいは個人的なメッセージをばらまいてしまうなどのリスクからも逃れることができそうだ。
特定の組織(たとえば、会社)やコミュニティ(たとえば、SNS)のように閉じたコミュニケーションなら、スパムというノイズやばらまきリスクをおおむね排除できそうに思うだろう。ところが、会社やコミュニティ内にあっても、自身にとってノーサンキューな情報が発生してしまうことは周知の通りだ。
さらに、このような明瞭な取り決めを介した“組織の壁”に守られないメール・コミュニケーション(あるいは、SMTPな世界と言うべきか)では、なおさらこの排除が困難であることは、多くの人々の痛感するところだ。
さて、このような問題を巡り、さまざまに新しい技術的、もしくは着想上の取り組みも始まっている。
最近、私の自身の関心から焦点を結んだのは、上記引用にある「コラボレーションの新地平か、「LUNARR」を使ってみた」、そして「Google、Web上の人間関係を把握する「Social Graph API」公開」「ブログやSNSを結び付ける「Social Graph API」をグーグルが公開」。さらに、「GoogleとYahoo!、WebメールをSNS化へ」だ。
いずれも、私の視点からはソーシャルな仕組みをコラボレーションに生かす方法が暗示されている。
LUNARRについてはすでにこのブログで書いた。
その時点ではU/Iや機能について具体的にイメージできなかったが、上記記事ではそれが詳しく紹介されており納得。
ここでは深く論じないが、LUNARRのアプローチにはやや懐疑的。ただし、メールにドキュメントを添付してやり取りしている間に生じる混乱...といった問題に解決を与える手法としては、確かに納得感のあるアプローチと言える。
上記に挙げた記事の内、「GoogleとYahoo!、Webメール...」は偶然見かけたものだが非常に興味深い。
IDCのアナリスト、レイチェル・ハップ氏は11月19日にeWEEKに、電子メールプラットフォームをソーシャルネットワーキングプラット フォームに変えることには大いに意味があると語った。電子メールプラットフォームは、ユーザーが自分の人間関係にかかわる情報を保存する場所だからだとい う。Gilbane Groupのアナリスト、ジェフ・ボック氏も同意見で、電子メールクライアントの件名、フォルダ、スレッドは、ビジネスネットワーク——「ソーシャルネッ トワーキングという挽き臼に入れる穀物」——を表すとしている。
例えばGmailは、複数のメッセージスレッドを1つの記録にまとめており、IBMのLotus Notes MailやMicrosoft Outlookでよく見られるような、メッセージが散らかった状態は少なくなっていると、ボック氏は19日のブログで述べている。
メール(クライアント)には、確かに“ソーシャルな機能”が種々盛り込まれている。また、たとえばNotesなどでは、「ナレッジマネジメント」の文脈から、Know Who機能を統合するアプローチなどがなされてきた。
メール(クライアント)上に盛り込まれてきたこれら各種機能(たとえば、アドレス帳、フィルタ、そしてタグなど)は、これまでのところ利用者の意欲に応じてその機能を果たすに止まる。また、組織内に閉じたグループウェアなら、サーバーとその管理者によって意図された機能を発揮するに止まる。
ここに現在欠けていて、将来、広義な意味でのソーシャル技術が寄与する余地が大いに残されている。
GoogleらのSocial Graph APIやFacebook APIの公開には、この未踏の分野を技術的に突破し得る可能性を印象づける。
でも、私の頭の中ではもう少し先に行けそうな気がしているのだが。機会があれば論じてみたいところだ。